反格差デモを考えるための本・新書

反格差デモが世界を席巻していますね。最近の世界情勢はほんと動いてる感があります。

この反格差デモを見て日本では「資本主義」について改めて考えている人も結構出てきているみたいですね。

ただまあ、これは正直当たり前の話だと思います。世界中で格差が発生することがです。

だって、資本主義って「格差を作る」ためのシステムじゃないですか。なんで今更「資本主義は間違っていたのでは」とか言うのでしょうか?

そんなの中学校で教育を受けてればみんな知ってることでしょう。

結局、教育を受けた内容をきちんと振り返ったり、自分の頭でその意味を考えることをしなかったのでしょう。だからこそ、「格差を作る」ことの意味を実感できておらず、いまごろこのニュースにビックリしてるんだろうなと思います。教育のカリキュラムを批判している隙があるなら、せめて習ったことを深く考えてみたらどうかと思いますけどね。

そもそも資本主義は別に唯一絶対のシステムじゃないし、対置されるものに社会主義しか無いわけでもない。

なのに社会主義の崩壊から資本主義が正当化されたかのように感じて、なんか正しいものだと勝手に思い込んでるから「反格差デモ」で動揺するんだろうなと。

ま、現在の格差社会は資本主義の必然的な帰結なので、少なくとも先進国の国民は、単にデモで政府に個別の政策を要求するだけじゃ駄目。もっとラディカルに根本たる資本主義について考え、変更していかなければならない。じゃなきゃ、格差はなくなりませんし、これからも開く一方ですよ。

もちろん、そういう格差を放置するのも一つの手段です。先進国の負債を発展途上国に押し付け続けるというのも、一つの選択肢ではあるかもしれません。

ただまあ、そういう極端な選択を行う前に、本でも読んでじっくり考えてみましょう。

というのが、今日の記事の導入ですw

井手英策『18歳からの格差論』(東洋経済新報社)

格差の問題を考えるなら、まずは簡単な入門書で全体像を把握しましょう。

誰にとってもわかりやすいという意味では、井手英策『18歳からの格差論』(東洋経済新報社)が手頃な本だと思います。

18歳からの格差論
18歳からの格差論

18歳からの、というタイトルを見て子供向けだと判断した人は、読書に慣れていない人ですね。読書の手順がわからないのであれば、真っ当な読書術の本でも読んでみた方が良いです。概要も知らずに難しい専門書を読みたがるのは勉強の仕方を知らないことの証明ですよ。

ちなみに著者の井手英策は、財政学者としてのバックボーンがある方です。派手な言説で注目を集めたい系のジャーナリストよりはよほど信頼できます。

本書の良いところは、ちゃんとデータを使って議論しようとしているところですね。証拠もない印象論だけで高度な問題に結論を出そうとしている人たちは滅び去れば良いと思います。そんなの居酒屋での親父の放談と変わりませんからね。

橋本健二『新・日本の階級社会』

続いては講談社現代新書から、最近出たばかりの本をピックアップします。

こちらの橋本健二『新・日本の階級社会』(講談社現代新書)は、2018年1月にでたばかりの本です。

新・日本の階級社会 (講談社現代新書)
新・日本の階級社会 (講談社現代新書)

やはり社会調査データを大量に用いた立論がなされており、印象論にはない説得力があっていいですね。

新自由主義による格差拡大によって、日本社会が既に固定された階級が発生している=「階級社会」となっていることを指摘しています。

「900万人を超える、非正規労働者から成る階級以下の階層(アンダークラス)が誕生。男性は人口の3割が貧困から家庭を持つことができず、またひとり親世帯(約9割が母子世帯)に限った貧困率は50・8%にも達しています。日本にはすでに、膨大な貧困層が形成されているのです。」

たしかに、貧困者が子供に高度な教育を受けさせることは事実上不可能ですし、そうなると一旦貧困層に落ち込んでしまえば階級を上ることはまったくの夢物語になりますからね。

シビアな状況ですが、データから読み取れる日本社会の現実の姿でもあります。まさに衝撃の事実だと言えるでしょう。

ここからどうやって日本社会を立て直していけばよいのか?

考えるべきことはたくさんありそうです。

『教育と社会階層: ESSM全国調査からみた学歴・学校・格差』

格差について考えるならば、自分たちの子供の世代や孫の世代がどうなっていくのかに思いを馳せざるを得ません。つまりは教育格差について考えざるを得ない、ということです。

現代日本の教育格差を考えるなら、この本がなかなか便利というか、考えさせられました。

・中村高康、平沢和司、中澤渉 編集『教育と社会階層: ESSM全国調査からみた学歴・学校・格差』東京大学出版会, 2018年

この本は7月に出たばかりの単行本で、

「従来のデータでは充分にとらえきれなかった様々な教育現象と社会階層との関連を明らかにする先端的な全国調査(ESSM)」

からわかった成果をきちんとまとめたものです。

これは目次を見るだけでもいろいろと考えさせられるので有益だと思います。

序章 教育と社会階層の調査:ESSM2013の概要(中村高康・平沢和司)
1章 就学前教育と社会階層:幼稚園・保育所の選択と教育達成との関連(小川和孝)
2章 学校における「いじめ」体験と社会階層(中村高康)
3章 戦後生まれコーホートの教育体験の潜在構造:その規定要因と教育達成・教育意識への影響(胡中孟徳)
4章 男女における専門学校進学の意味:「変容モデル」再考(多喜弘文)
5章 大学進学率の上昇とメリトクラシー(中澤渉)
6章 世帯所得・親学歴と子どもの大学進学(平沢和司)
7章 子どもの教育達成に対する家族・親族の影響:オジオバの学歴と男女差に着目して(荒牧草平)
8章 親の教育意識の類型と子どもに対する教育期待:潜在クラスモデルによるアプローチ(藤原翔)
9章 高学歴社会における「学校教育の意義」:学校経験に対する人々の認識をもとに(古田和久)
終章 教育と社会階層をめぐる諸問題:ESSM2013から見えるもの(中村高康)
付録:「教育と仕事に関する全国調査」調査票

特に終章のまとめは一読をおすすめします。親の学歴や所得によって、これだけの意識の違いが出てくるのかと思うと、なるほどわかりあえそうにないなと思いました。

いや、諦めちゃダメなんですけどねw

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