【感想】『論理の哲学』飯田隆編

『知の教科書 論理の哲学 (講談社選書メチエ)』飯田隆編を再読。

最初に読んだのはもう何年も前のことで、当時は分析哲学に興味を持ったばかりだった。そのため諸概念についての理解などが乏しく、読み進めるのに非常に苦労した記憶がある。

今回読み返してみて、さすがにすんなり読み通すことができたので、自分の成長を感じられて少し嬉しいw

知の教科書 論理の哲学 (講談社選書メチエ)
講談社
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それはさておき、講談社選書メチエは骨太な内容を扱っているよなというのを改めて感じた。少なくとも、この本は入門書では絶対にないと思う。あるいは、数学や論理学、言語哲学などをある程度学んでいる人が論理学や計算機科学の哲学的背景について入門するときに読む本なんじゃないかなと。

とにかく全くの素人では挫折すると思われる。特に不完全性定理あたりからテーマとしてもとっつきにくくなっているかと。

とはいえ内容としてはかなり頑張っているように思う。このページ数にうまく詰め込んだなぁという印象。

第1章でフレーゲを中心に論理の哲学についての歴史的な概観を与え、続く第2章と第3章では嘘つきのパラドクスとソリテスパラドクスをきちんと解説している。

第4章では「完全性と不完全性」というテーマで、構文論と意味論についての基本的な事柄を易しく解説した後、公理系という考え方を導入し、ペアノ算術からヒルベルト・プログラム、そしてゲーデルの不完全性定理の解説へと進む。不完全性定理の解説は「短く、ある程度厳密に」を意図したのだろうと思われるが、これでわかる人は少数派じゃないかなと思う。

第5章では構成主義数学について、なぜか対話篇で話が進んでいく。この章だけ急に対話篇になって驚いたのは私だけじゃないはず。違和感バリバリなんだけど、そのぶんとっつきやすくはあるかもしれない。

第6章では「論理主義の現在」ということで、新フレーゲ主義について解説がなされている。このテーマについてはそれなりにまとまっているし、かなり見通しが良くなるかと思う。(フレーゲの数学の哲学について、さらに深く掘り進めるのなら、『フレーゲ哲学の最新像―ダメット、パーソンズ、ブーロス、ライト、ルフィーノ、ヘイル、アクゼル、スントホル (双書現代哲学)』がある。この訳者解説部分は、新フレーゲ主義そのものの位置づけを美味く与えているので、一読の価値があるかと。)

第7章では「計算と論理」というテーマで、『カリー=ハワード同型対応』について、解説がされている。論理学と計算機科学の間を架橋する重要な原理として第5章でも言及されているし、ラムダ計算については第8章でも触れられているので、ある意味本書後半の重要テーマといえるかもしれない。しかしその分、とっつきにくさを強く感じるかもしれない。なにしろ、論理に興味があるからここまでついてきていた読者でも、計算にまで興味があるとは限らないから(まあ、それは数学も一緒か)。ただ、内容は丁寧に説明されているので、じっくり読めば理解できると思う。

第8章は自然言語がテーマなのだが、本書後半の章に比べて一気に内容が易しくなっていると思う。不十分という意味ではなくて、言語哲学に既に触れている人間からすればとっつきやすいテーマだからなのかもしれないが。

総じて言えば、テクニカルな部分の説明が薄いのでついていくのに苦労しそうだが、そこを超えられれば、『論理の哲学』の見取り図をうまく与えてくれている良書だと思う。