『本を読む本』読書感想

『本を読む本』(講談社学術文庫)を読みなおしたので、簡単な書評というか、感想みたいなものでも書いておきます。

もっとも、M.J.アドラーとC.V.ドーレンのこの高名な本については、ウェブ上に良質な書評や要約がいくらでもあるわけで、今更私が書く必要もない気がしますけどねw

読書の4つのレベル

さて、本書は精読に値する良書を深く理解するための実践的な「読書の方法」を、要求されるレベルに応じて4つに分類し、詳細に解説したものです。

まずは文章を単語の集合として読み取っていく、本来的なリテラシーである「初級読書」。日本人ならこのレベルについてはほとんどクリアできているはずです。もちろん、得手不得手はあるかもしれませんが、普通はクリアできています。

続いては、多くの速読術や読書術が該当するであろう「点検読書」。これはさらに本のまえがきやあとがき、目次、著者略歴などの「本の構成」から情報を読み取っていく「拾い読み」の段階と、全体像を把握するためとにかく通読してみる「表面読み」段階に別れています。

簡単に言うと、「点検読書」は深い分析を行うために必要となる下読みの段階です。下読みというときちんと読んでいないような印象を受けますが、普通の人は「点検読書」レベルの読書すら行えていません。本を買って、いきなり最初のページから順番に読んでいくやり方しか知らない人は、この段階にすら達していないのですね。

その意味では、普通の人はこの「点検読書」をマスターした段階で読書生活が飛躍的に豊かになると言えるかもしれません。

精読の中心となる「分析読書」

しかし、読書にはまだまだ先があります。

本書の中心は「分析読書」という第3段階の読書法の解説で、これは1冊の本を正確に理解し批評するための読み方を意味します。

この「分析読書」の手法は、高校生レベルで習得しておきたい技法とのことですが、実際は大学生・大学院生になってもこの技術が身についてない人がほとんどです。言い換えれば、1本の論文や1冊の研究書を読み込む際に要求される水準がこの「分析読書」なのですね。

こう言うと、研究者以外には必要ないかのように思う人もいそうですが、これはあくまで「高校生レベル」で身につけるべき基礎素養です。高校を卒業して読書をする人なら、これくらいは身につけておかねばならないと思います。なぜなら、日本では多くの人が本を読みますし、読んだ本について「書評」を書いたり友人で感想を伝えたりすることは珍しくないからです。書評を書く場合は当然として他人に感想を伝える場合であっても、その前提として本の内容を理解しておく必要があります。「分析読書」は、本の内容を深く正確に理解するための技術ですから、この技術に習熟しておくことは前述の人々にとっても有益なことなのです。

ここで、他人に口頭で感想を伝える程度のアウトプットなら、分析読書のような仰々しい技術なんて必要ないのではないかという反論も出てくるかもしれません。

たしかに、常に「分析読書」を行う必要はないでしょう。「点検読書」でも十分かもしれません。時間的な制約もあるでしょうし、なんといっても「分析読書」は良書を読むための技法なのですから、瑣末な本を読むのに分析読書をする必要はないといえるでしょう。

しかし、分析読書は1冊の本を理解するための理想的な読書術です。そうであるならば、必要とされる理解度に応じてその技術を簡略化して適用するためにも、ここで正統な方法を学んでおくが良い、ということになります。できるけどしないことと、できないことは違うのです。

読書の最終レベル「シントピカルリーディング」

さらに「分析読書」の上には、「シントピカルリーディング」というレベルがあります。これは複数の本を分析し、それらを突き合わせて議論させることで、個々の本の認識を超えた知見を読者にもたらす究極の読書術です。本書によれば大学の学部学生以上が必要となる読み方であり、研究を行うために必須の基礎技能だと言えるでしょう。

その詳細については長くなるので、ぜひ本書を読んでいただきたいのですが、重要なことは「シントピカルリーディング」レベルまで到達できている学生は、現代日本だと極めて少ないということです。

逆に言うと、これができるようならレポートや論文で抜群の評価を得ることができます。たかだか文庫本一冊で他者から抜きん出ることができるわけですから、本当に素晴らしい投資効率ですね。

本書は、書かれてから数十年が経過しているにもかかわらず、読書法の本としては誰もが読むべき第一級の重要性を保ったままの名著であり、講談社学術文庫を代表する傑作です。

本を読む本 (講談社学術文庫)
J・モーティマー・アドラー V・チャールズ・ドーレン
講談社
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