『日本の思想』丸山眞男 読書感想

丸山眞男『日本の思想』を読了。

岩波新書を代表する名著であり、現在も大学で読まれ続けているあたりがすごい。

日本の思想 (岩波新書)
日本の思想 (岩波新書)

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岩波書店 (2015-12-03)
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実は丸山眞男を読むのはこれが初めてだったりする。毀誉褒貶の激しい人だから、ついつい敬遠してしまっていたのだが、知人に勧められて読んでみたところ、その分析の鋭さに驚嘆させられた。刊行後50年もの月日が流れているにもかかわらず、いまだに版を重ねていることの理由がよくわかる。半世紀前の分析がいまだに一定の説得力を持っているというのは恐るべきことだ。

もっとも、半世紀が経過したのに『日本の思想』の分析から一歩も出ていない日本社会にこそ恐怖を覚えるべきかもしれないが。

本書に収録された作品はいずれも一読の価値がある。特に、後半の二つの章は市民を対象とした公演をもとにしているらしく、平易な話し言葉で描かれているので高校生でも読んで理解することができるだろう(そういえば、アマゾンのレビューに、昔の新書は難しい云々と書いていた人がいたけど、後半の二つの章まで辿りつけなかったのだろうなと思う)。

個人的には、大変インスピレーションが湧く作品だった。イメージの層の話ではルーマンを思い出したし、第4章の『「である」ことと「する」こと』では言語行為論に通じるものがあるなと思った。「である」と「する」の発想を社会的な観点と絡めて論じているのも興味深い。

もちろん当時と今とでは学問的な進展もあるだろうし、思想史的な事実についても現在では通用しない理解が含まれている可能性もあるだろう。そこは発表された年代を考えれば当然であり、本書の価値を減ずるものではないと思う。

昭和のある時期における思想的な状況を示す資料としても貴重だし、現在との対比で捉えてみても興味深い思索ができるのではないか。

「丸山眞男は○○であるから、こういう主張をしているはずだ」みたいな変な予断を持たず、虚心坦懐に読んでみて欲しい。それだけの価値がある作品だ。