『地中海都市周遊』 読書感想

『地中海都市周遊』(中公新書)を読み終える。陣内秀信、 福井憲彦という歴史と建築ふたつの分野の専門家が、地中海沿いの都市をめぐって対談するという内容。豊富なカラー写真が専門家による説明に彩りを添えている。

率直に言って、建築に関する知識とか建築史に対する興味は、私の中であまり強くない。そのため、私は本書の面白さを十分に味わえているとは言いがたいかもしれない。

ただ、地中海周辺の都市に存在する美しい建物の写真と、それに対する専門家のコメントは、なんとなく読んでいるだけで楽しくなってくる。深く考えずに眺めているだけでもそこそこ面白いというのは、とても素敵なことだ。

しかし、なんでわざわざ対談形式にする必要があったのか、いまいちわからないなという感想。普通の文章としてまとめてくれたほうが、読む方としては楽だったんだけど。

まあ、そういうことを言いだすと、世の中の対談本の存在意義が亡くなってしまうんだけどw

たぶん、建築関係に興味があって、本書の著者のことをよく知っている人たちにとっては、「誰が何をどのように発言しているのか」が重要なんだろうね。私も自分の専門領域ではそういう興味の持ち方をするから理解できる。

要するに、非専門家にとっては、対談本じゃないほうが読みやすいってだけだな。

話を元に戻すと、イスラム圏とキリスト教圏の交錯した生活領域の人々の暮らしが、市場や普通の住居のカラー写真とともに紹介されているというのは、類書に見られない本書の特徴だと思う。特に建築だとか室内装飾などに興味がある人は見ておくべきだろう。イスラム建築の内装ってあんなにみごとなのかと感動した。

やはり旅行記だとか、文化、歴史についての本は、カラー写真とともに見たほうがずっとイメージしやすく記憶に残るなと思う。そういう意味で、カラー版を出したのは正解だ。

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追記

地中海周遊で気になったことを、記憶から引っ張り出しつつメモ(従って引用ではないし、趣旨を誤って覚えている箇所もあると思う。面倒なので確認はしていない。よって、ここに書かれたことを鵜呑みにはしないように)。

・ゴシック建築は光をステンドグラス越しに透過させることで、明暗のコントラストを作っている。外と内をはっきり区別しており、森のような暗さがある。

・アルハンブラ宮殿などのイスラム建築は、明るい地中海の日光を意識し、立体的な装飾によって人工的に影を作っている。日差しが強いためにすべてが白色に染まってしまうからこそ、立体による光のコントロールが必要だった。