『罪と監獄のロンドン』スティーブ ジョーンズ 読書感想

『罪と監獄のロンドン』を読了。著者はスティーブ ジョーンズ。2012年11月にちくま文庫に収録されたばかり。新刊書店でたまたま見つけて、面白そうだったから即購入した。

「犯罪」と「刑罰」、そして「イギリス史」という個人的にとても興味をそそられるテーマなので、読まない訳にはいかないだろう、と。

写真こそ白黒だが、ハードカバーから文庫に収録されるにあたって図画を削っていないらしい。この手の本で重要なのはイメージを喚起する実際の資料なので、このような編集方針はとても好感が持てる。

罪と監獄のロンドン (ちくま文庫)
罪と監獄のロンドン (ちくま文庫)

本書は、ヴィクトリア朝ロンドンの大衆犯罪とそれに関わる人々の意識・生活状況、監獄の実体などを豊富な資料とともに紹介している一冊。

先ほども述べたように、写真や図画が多数収録されているので、当時の時代状況といったものが視覚的にも理解しやすい。私も含めた大半の日本人は、この時代のイギリスやロンドンに対して予備知識がないだろうから、このような資料をふんだんに使う方針は素晴らしい。

当時の裁判の様子や被告人らの態度などは、現代の視点からするとややユーモラスに思える箇所もある。しかし当時の人々の立場を想像してみると、とても恐ろしかっただろうと想像できる。

それにしても当時の監獄の状況というものがいかに過酷だったのかがよくわかる。特に清潔好きな民族と言われいている現代日本人にとって、当時の監獄の衛生環境というのは地獄以外の何物でもないだろう。

そういえばジョジョの奇妙な冒険第6部で、徐倫が虫のたかるような食事を躊躇なく口にする場面があったけど、本書によれば、ヴィクトリア朝ロンドンの監獄にあってはあんなものじゃなかったみたいだ。衛生状態が悪くて健康だった人間もすぐに病気になりそうだ。軽い罪で短期間の服役だった人間にとっては、これ以上ない悲劇だよなあと思った。

最近のラノベなんかは現代日本人のファンタジー世界転生orトリップ系作品が(「小説家になろう」の影響で)とても流行っているが、まじめに考察すると過酷なんてものじゃないな。まあ、まじめに考えたら、抗体のない病原菌で死亡が一番ありそうだけどw

ちなみに、現代とは異なる時代の刑事制度などを考えるなら、日本における「狂気」の役割について考察した井上章一の『狂気と王権』なんかも非常に面白い。まさに日本版フーコーの考古学って感じ。

⇒ 『狂気と王権』井上章一 読書感想

本家本元のフーコー『監獄の誕生』も必読でしょう。もっとも、こちらはより学問的だけど。他にも公衆衛生の前提となる「統計」の誕生に関するイアン・ハッキングの本とか、色々と関連しそうな本が日本語になっている。興味がある人はどうぞ。