藤原聖子『世界の教科書でよむ〈宗教〉』読書感想

藤原聖子『世界の教科書でよむ〈宗教〉』という本を読みました。

ちくまプリマー新書から出ている宗教理解の入門書です。学問としての宗教学の本ではありません。現実に外国で宗教がどのように教えられているのかを、その国の宗教の教科書を通じて見ていくというコンセプトですね。

最近は教科書から世界各国を読み解くコンセプトの本も増えてきた印象ですが、本書は比較的最初の方に出版されたものではないでしょうか(正確には調べていないので、記憶違いなどがありましたら申し訳ございません)。

著者の藤原聖子氏は1963年生まれで、比較宗教学を専攻なさっています。東大文学部の准教授。シカゴ大学大学院博士課程修了でPh.D.とのことなので、一般的な日本人が持つ宗教に対する前提とは違う視点を期待できそうな気がします。

取り上げられている国々はアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、トルコ、タイ、インドネシア、フィリピン、韓国といった国々。この手の企画では往々にしてキリスト教の影響が強い欧米ばかりを扱いがちですが、仏教国のタイだとか、歴史的に問題が複雑化しがちな東南アジア諸国も同じように取り上げているところが良いですね。

キリスト教国におけるイスラム教やユダヤ教への目配りは、我々日本人がイメージしているよりもはるかに繊細なのだとわかります。

言い換えれば、本書を読むと日本の宗教教科書の「無自覚な前提の数々」に否応なく気付かされます。これは教科書作成者の文化的無理解に起因するのではないでしょうか。子供に他文化への理解を求める以上、教科書作成者が無自覚な前提にとらわれて不適切な理解をしているのであれば、大変良くありません。教科書の役割を考えると、その手の無理解は理由のいかんを問わず非難されるべきだろうと思います。

私の経験からしても、実際に外国人と話してみると、日本で信じられている宗教観とは随分違った印象を受けます。そうした食い違いの根っこを掴んできちんと相手を理解するためにも、本書はとても助けになってくれそうです。

国際化とか異文化理解に興味が有るのなら、まずはこの本から始めるべきでしょう。

ちなみに本書の著者である藤原聖子氏は、日本の宗教教科書の問題点を分析するというコンセプトで『教科書の中の宗教』という本を岩波新書から出しています。コンセプト的に本書の裏面的な位置づけができそうなので、本書を読んだ次はこの本に進むのがいいかもしれません

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