法学の事実認定や証明論で今気になっている本

個人的に今欲しい本をいくつか挙げて、コメントを書いておきます。特に私以外の人に意味があるとも思えないメモ帳代わりの記事ですが、何か事実関係に誤りがあるかもしれませんので注意しておいてください。

法学者は、他の学問分野に対して関心を持たず自己の狭い専門領域に閉じこもる傾向があります。いわゆる「理系」なるものに関わる学問を徹底的に忌避する傾向にあるのか、他の社会科学との関わりも薄い状況です。まあ、私が知っているのは刑法学という狭い分野の実情だけなので、これを法学者全体にまで一般化するのは危険なことかもしれません。とはいえこれは私の率直な感想であり、少なくとも刑法学者はあまりゲーム理論やベイズの定理などを考慮しない、というか知らないように思います。

もちろん学習の時間的制約がある以上は、他の分野にまで常に眼を配れとはいえません。しかし、有効な分析ツールであるはずの他分野からのアプローチを徹底的に忌避するのはいかがなものでしょうか。

今の時代日本語で読める啓蒙書や入門書は非常に多く、新たなアプローチのために学習する時間が皆無だとはとても思えないのです。

まあ、自分の学問分野の最新動向を把握するだけでも一苦労なのかもしれません。大学での業務もあるので若いうちはともかく年齢が上がってくると大変なのかもしれません。そのあたりは私がまだ若いのでよくわかりません。しかしそれなら少なくとも若手のうちは、他の学問分野にも眼を配ることを奨励するべきではないでしょうか。今現在、そのようなアプローチは、正攻法で業績を挙げられない能力の低い人間の苦し紛れの研究だと思われているように見受けられます。実際のところ、他分野を顧みない「正攻法」アプローチによって大きな成果が出ることなどあまりないのですが、そういうところは無視されています。このような状況はあまり健全ではありません。

こういう問題意識を常々持っていたところ、Amazonでこちらの本が目に止まりました。

●太田勝造『裁判における証明論の基礎―事実認定と証明責任のベイズ論的再構成』、弘文堂、1982年

正直なところ事実認定そのものに対する興味は薄いのですが、法学の分野でベイズの定理を利用した研究を見ることなど殆どなかったので、内容がとても気になります。出版されたのが1982年とのことなので割と古いものですが、逆にその当時から研究の蓄積が増えていないことの方がショックかもしれません。最近はベイズの定理への注目が高まっていて、関連書籍の出版も増えているというのに……。

てか、調べてみたらこの本は修士論文を刊行したものなんですね。当時絶賛されたらしいのですが、その方向で追いかけてくる人はいなかったのでしょうか……。

同じく太田先生の本ではこちらも気になります。

●太田勝造『法律 (社会科学の理論とモデル) 』、東京大学出版会、2000年

「社会科学の理論とモデル」シリーズの1冊です。ゲーム理論やベイズ意思決定論を利用した研究で、法学分野でこういう本は非常に珍しいです。アマゾンのレビューでは、著者が東大法学部で異端であることが触れられていますけど、やっぱりそうなんですね……。

論理解釈と目的解釈

論理解釈と目的解釈なんてことが法解釈の場面で言われることがある。

なぜかこれらが対立するかのように言われているけど、
これはカテゴリーミステイクな気がするな。

そもそも目的解釈は論理的じゃないのかというと、
もちろんそんなわけはない。

「どんな立場だろうと論理的推論を行わないと話が通じない」

これは誰だってわかる。言うまでもないことだ。

ただ、目的解釈といわれているものは、
(自覚的かどうかは知らないが)自明でない前提を導入して
論証を構成しているに過ぎない。

だから、暗黙裏に導入した命題が、体系内の他の命題と矛盾するのでないかぎり、
形式論理的な解釈になっているのに変わりはないと思う。
(過不足なく前提を使えているのかとか、そういう論理性と別の基準はさておき。)

だから両者が対立するのは、むしろ導入した前提の妥当性だとか、
無駄な前提を導入しているとか、そういう論理的推論以外のレベルでだと思う。