『シーア派 台頭するイスラーム少数派』(桜井 啓子)を読了。
中公新書の中の1冊で発売日は2006年10月。
イラクやイランなどの中東情勢を考えるのにイスラム教への理解は欠かせない。
その中でシーア派はイスラム教の中でも少数派と言われているが、
テロリズムとの関係で報道されることもあれば
イラク国内情勢を語るために言及されることもあるなど、
その存在感はかなりのものだ。
だがその反面、シーア派はいかなる点で多数派と異なっているのか、
過激派的なイメージがついているのはなぜなのか、
少数派がなぜここまで存在感を持っているのかなどなど、
日本においてその実情は余り知られていない。
本書は、ムハンマドの時代からわかりやすく歴史を追っていくことで、
これらの疑問について一定の見通しを与えてくれる。
丁寧に歴史を追っているので、予備知識がなくてもすんなり理解できるし、
世界史的な出来事との関連も自然と頭に入ってくる。
シーア派とスンニ派の緊張関係からイスラム教の歴史が見えてきたり、
今日の世界情勢にそのまま影響が残されていたりと、
歴史を知ることが現代世界を理解する有益な手段であることが実感できる良書だ。
追記
2015年現在、中東地域をイスラム国が席巻している。世界中がその動向に注意を払っている。
こうしたイスラム過激派組織を真摯なイスラム教の主流派組織と同一視することはできないが、それでもイスラム教内部の動きを知っておく必要性が10年前よりずっと増していることは疑いない。
本書はその意味で、必読書に指定していいものだと思う。
他に宗教関係で読んでおくべき新書としては、こちらの記事で紹介した本がわかりやすい。
タイトル通りの内容で、世界各国で書く宗教がどのように理解され教えられているのかがわかる。他国との相互理解には欠かせない一冊。