ドイツ関係の本を最近よく読むようになってきた。それはドイツの歴史や風土、底に住む人々の精神性、人間性といったものに興味が出てきたからだ。
そもそも刑法学に携わる人間としては、ドイツほど日本刑法に強く影響を与え続けている国が他にない以上、これらの分野に関心を持たない方がおかしいとさえ言える。法学部生の頃にこの分野の本を読み漁らなかった事の方がよほど不自然だったのだ。
というわけで、今更ながら読み始めたわけだが、そもそも世界史の全体像も記憶から薄れつつある現在、いきなり歴史などの専門書を読んでも記憶や理解がおぼつかないだろうと思われた。
そこでまずは新書で読めるドイツ関係の物を片っ端から読んでみようと思ったわけだ。
まず読み始めたのが岩波新書から出ている坂井栄八郎『ドイツ史10講 (岩波新書)』(2003年)。これはドイツの歴史を10回に分けて平易に解説している読みやすい入門書だ。教科書とは違って平板ではなく、ろくな歴史知識がない人間としてはとてもおもしろかった。
次に手にとったのが、これまた岩波新書から出ている高橋義人『ドイツ人のこころ (岩波新書)』(1993年)。ドイツ文学の研究者が書いたドイツ的な精神を風土・歴史の観点から解説している本だが、こちらはあまり良いと思えなかった。「ドイツ人は内向的でメランコリック」という分析の出発点からして、もっと細かく説明や実証を要する事柄だと思う。ゲーテだとかシラーとかの詩やロマン主義音楽など芸術方面からの引用などが多く、やはり著者はそちらが専門なのだろうと感じられた。
他には河出書房新社から出ているふくろうの本シリーズの『図説 ドイツ古都物語 (ふくろうの本)』(1999年)も読んでみた。こちらはどちらかというと私の趣味なのだが、古都に着目してその街の主だった歴史的な出来事を記述しているので、通史とは違った視点から知識を得ることができて有益だった。写真も多かったので今後ドイツ史の本を読むときのイメージがしやすくなったのも良かった。
ちょっと変わったところでは川口マーン 惠美『ドイツ料理万歳! (平凡社新書)』(2009年)も興味深い。ドイツ在住者の料理エッセイなのだが、随所にドイツの風習や文化が読み取れ、臨場感を高めるのに最適かもしれない。
次は文化史か、普通の通史を読んでみようと思っている。