大江一道『新物語世界史への旅』のⅠ巻とⅡ巻を読み終えた。各章10ページくらい構成されており、気軽に読むことができる稀有な書籍。トピックも王道的なところから高校までの学校教育であまり扱われないところまで幅広く揃っている。
執筆者がきちんとした学者なので、記述に信頼感があるのもいい感じだ。よくある世界史の雑学的な本では、記述の信憑性に問題がある。別にその人が嘘を書いているというのではなく、そもそも専門知識はアップデートされるものだからだ。日々更新される学会のコンセンサスを追いかけられるのは、きちんと研究成果を追いかけることにリソースを割いている専門研究者しかいない。
その意味で本書は、世界史に興味をもった人が導入的に読むのに良い本だと思う。
例えば、カルタゴの興亡や古代ケルト民族についてなどは、世界史で名前こそ知っていても詳細についてはほとんど知らないのではないだろうか。後代への影響という意味で重要性の観点から省かれたこういうテーマについても、ざっと触れてくれているのはとてもありがたい。
個人的には参考文献が章末にまとまっているのが嬉しい。特に専門の論文などではなく、一般人でもとっつきやすい書籍を挙げてくれているので、気になるテーマについてさらに自分で調べられる。
世の中には、一般向けの入門書として書かれているのに、参考文献として一般人が入手しにくい専門論文や外国語文献ばかりを挙げる人もいる。それに比べたら、著者は読者のレベルをよくわかっているなという印象を受けた。この辺りは、学生相手に講義してきた経験などが反映されているのかもしれない。
このように案外配慮が行き届いている本なので、高校で習った世界史の記憶が薄れている人でも問題ない。
もっといえば、高校生が世界史の理解を深めるための副読本としても十分に使えると思う。歴史に限らず、物事を記憶するためには、周辺知識が一緒にあった方が効率的だからだ。
図書館などに所蔵されていることが多いので、まずは借りて読んでみてはいかがだろうか。マーケットプレイスの価格も安く、割と気軽に入手できるので、近所に古書店がない人もネットでチェックしてみてもいいと思う。
歴史関連書籍としては、このブログでこんな本も紹介している。
>> 『古代ローマ人の24時間』アルベルト・アンジェラ 感想
興味がある方は上記記事なども参考にしてみてほしい。