岡本正明『小説より面白いアメリカ史』を読了。25章からなる米国史を題材にした歴史エッセイ。
エッセイを読む楽しみといえば、著者とそのテーマとの個人的な関係性を知ることだと個人的には思うのだが、本書は個々の人物に焦点を当てた客観的な記述が比較的多かったように感じる。
もちろん、それが悪いというわけではないし、これはこれで歴史の雑学的知識を得られたので面白かった。
国際連盟を提唱しながら自ら参加することは出来なかったウィルソン大統領の話や、一代で財閥を築き上げた鉄道王コーネリアス・ヴァンダービルトの話など、英雄的な人物の話はたいへん興味深い。
英雄的な人物に関しては名前くらいなら聞いたことがあるものの、その詳細についてあまり知らなかったりもするので、余計にそう感じた。多少は人間味を感じるようになったかも。
また、第5章の「海をへだてた南北戦争」などは、しばしば内戦として処理されがちな南北戦争に、イギリスの参戦を回避しようという外交的な戦いがあったという意外な事実が紹介されており、この点については下手な小説より面白く読めた。
正直なところ、私は南北戦争を単なる内戦だと信じて疑わなかったので、それと外国との関わりという視点はまったく持っていなかった。本書を読まなかったら、ずっと気づかなかったかもしれない。それだけでもこの本を読んだ意義があった。南北戦争について、もっと詳しく知りたくなってきた。
名作文学「風と共に去りぬ」のレット・バトラ ー船長を題材に、南北戦争時の「封鎖破り」について述べた章も、中々一般の書籍でこういう話を見かけないので興味深かった。文学を深く楽しむためにも歴史的背景を押さえておくことは重要だ。もちろん、ひたすらテクストに向かう脱構築的批評理論にも長所はあるのだろうけど、それだけでは面白くない。別個の方法論による重層的な読解こそ必要だろうと思う。
話がずれたけど、本書は出版社の内容紹介にもあるように、
アメリカ史の「トリビアの泉」!「小説より奇なり」事実の数々を集めた、物語風アメリカ史の決定版である。
という感じだ。まあ、「決定版」は言い過ぎだと思うけどw
少なくとも読んでて退屈はしなかったので、アメリカ史に興味が出てきたばかりの人にはとっつきやすいのではないだろうか。
私自身も本書を切っ掛けとして、さらなるアメリカ史関連書籍を読み進んでいこうという意欲が湧いてきた。
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