アルベルト・アンジェラ『古代ローマ人の24時間 よみがえる帝都ローマの民衆生活』(河出文庫)を読了。
コンセプトが興味深かったので、あまり期待せずに図書館で借りて読んだ。ところが、思ったよりもずっと面白くて驚いた。ローマ関係の情報を求めている人は、まず本書を読むべきだろう。
古代ローマ人の24時間 ---よみがえる帝都ローマの民衆生活 (河出文庫)
ローマ人の暮らしをここまで細かくわかりやすく紹介してくれている本はないのではないだろうか。食生活や住環境、風呂に性生活、社会制度、風習、商業、都市問題などなど、おそらく本書に当たれば古代ローマ人の暮らしについての疑問の大半は解消されるのではないか。
ハードカバー版の初版発行が2010年だが、文庫版が2012年に出ている。まさかこれだけの良書がわずか2年で文庫化されるとは思わなかったので驚いた。おそらく、映画テルマエ・ロマエの公開に合わせて急遽文庫さしたのだろう。とはいえ本書はある程度定評ある良書といってもよく、ブームに乗っただけのローマ本ではないことに注意。
著者はイタリアで非常に有名なサイエンスライターであり、サイエンス系のTV番組でも有名らしい。その抜群の知名度に加えて、まるでテレビのナレーションを聞いているかのような読みやすい文章、興味深い題材の取り方や現代イタリアの生活との比較によるわかりやすさなどの本自体の内容の素晴らしさによって、原著は40万部を超えるベストセラーになっているらしい。
実際に読んでみて、それだけ売れる理由もよくわかった。考古学的な内容を踏まえているだけじゃなく、その成果を親しみやすい形で紹介する手法は実に素晴らしい。奴隷を家電製品と比較するのも秀逸な例えだと思う。少なくとも20世紀初頭くらいまで、奴隷ではないにせよ暮らしに必要な労働力は人の手によって行われていた。安易な現代文明批判をする人はこの点を見落としているような気がする。
この著者がやっているイタリアのTV番組は、色々と歴史について面白い題材を取り扱っているみたいなので、日本のNHKあたりが番組を買って日本語にして放送してくれないかな。
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