早坂吝の第50回メフィスト賞受賞作『○○○○○○○○殺人事件』を読んだので、その感想でも書こうと思います。
講談社
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どうでもいいですけど、この作品のタイトルってGoogle検索結果に反映されない記号なんですね。検索結果を見ると「殺人事件」しか表示されてませんw
ネタバレ回避で逆に衝撃
元々ネットで話題になっていることは知っていましたが、ネタバレが怖くて特に情報を集めてはいませんでした。それにネットの情報はあまりあてにならないものばかりなので、普段からあまり参照しないんですよね。
そんなわけで、私はこの作品をまともなミステリなのかと思って読んでしまいました。
これが間違いだったんですね。
普通のミステリだと思って読むと、モヤモヤした気分になると思います。つまらないわけではないのですが、その面白さは期待していた方向性と違うんです。
寿司を食べてるつもりだったのに、出てきたのはハンバーガーだったみたいなコレジャナイ感。どっちも好きだけど、期待していたものじゃないという。
真相の詳細なネタバレが困難な理由
この作品は、詳細なネタバレが困難です。
というのも、これは軽いネタバレになりますが、事件の根幹部分に下ネタが入り込んでいるからです。なので、真相を知って驚くより唖然としますし、詳しく説明しようとするとアウトになりかねません。
私は「なんじゃそりゃ!」と失笑してしまいました。
完全に『六枚のとんかつ』等のメフィスト賞系「バカミス」を読んだときの反応です。その意味では典型的なメフィスト賞作品だと思いますね。
タイトル当てというコンセプトも紛うことなきイロモノ路線ですし、メイントリックも「俺は今何を読まされているのだ……」と思ってしまうほどシモネタです。
たぶんこれをやりたいがために舞台や状況設定を整えてそれが自然となるキャラクターを設定したのでしょうね。雑談の笑いを取るためのネタとしてならともかく、このネタで長編ひとつ書いてしまえるのは凄いです。
下ネタだけどちゃんとしたミステリー?
とはいえ、題材がシモネタなだけで事件の検討自体は割としっかりやっています。きちんと本格ミステリーです。
しかしだからこそ切ないのです。
登場人物が真剣に仮説を検証しているのは理解できるのですが、そのときの状況と検討内容を考えると微妙な気分になります。
ただ、何度も言いますが、つまらないわけではないのです。
本格ミステリーとしての面白さは微妙ですが、最低限の様式は備えています。むしろ下手なベストセラー作品よりもロジックの完成度は(ある意味)高いです。
単にそれ以外の要素が目立つから誰もそこに感心しないだけでw
この作品は、特殊な設定をひとつ持ち込むだけで本格ミステリーをバカミスに変えてしまった稀有な例だと思います。
まあ、私はこの作品を他人に薦める勇気はありませんがw
【他の読書感想記事】
⇒ 『罪と監獄のロンドン』スティーブ ジョーンズ 読書感想
上木らいちが探偵役でシリーズ化
その後、上木らいちが探偵役でシリーズ化していますね。
2017年には無事に文庫版も登場しています。
この探偵役でよくもまあ、といった感じですね。一発モノになるかと思っていたので、ちゃんと文庫化されたのには本当に驚きました。
援○探偵なんて、ブログに書けないよw