Amazonの新刊案内を見ていたら、講談社選書メチエの12月の新刊の中に気になる物を発見。
・記憶術全史 ムネモシュネの饗宴 (講談社選書メチエ)
記憶術の歴史に関する本らしい。思想史系ですね。
この分野だとしばらく前にフランセス・イエイツ『記憶術』が邦訳されていましたが、当時のAmazonのレビューには怪しいハウツー本と勘違いしたレビューワーが湧いていて苦笑した覚えがあります。
本書もビジネス書と勘違いして買う人が大量に出そうな予感。
現在公開されている目次は下記のようになっています。
プロローグ ムネモシュネの饗宴──開宴の辞
第1章 記憶術の誕生
第2章 ルネサンスの記憶術
第3章 忘却術とイメージの力
第4章 天国と地獄の記憶──ロッセッリ『人工記憶の宝庫』
第5章 饒舌なる記憶──デル・リッチョ『記憶術』の世界
第6章 テクストの中の宇宙──チトリーニ『ティポコスミア』が描き出す建築的情報フレーム
第7章 混沌の森から叡智の苑へ──デル・リッチョの記憶術的理想庭園
第8章 記憶術の黄昏──シェンケルの「方法的」記憶
エピローグ 終わらない宴
注釈と書誌情報もしっかりついているようです。
記憶術の思想史的側面に興味があるものの自分で参考文献を掘って行くのはしんどい、という私のような怠惰な人間にとっては、非常に興味をそそられます。
著者の桑木野幸司氏は西洋建築史や美術史を専門とする研究者のようです。どうやら記憶術と建築の関係性について研究なさっているようですね。
2014年に出版された前著『叡智の建築家―記憶のロクスとしての16‐17世紀の庭園、劇場、都市』(中央公論美術出版)は、もともとイタリアで出版され、2012年度地中海学会ヘレンド賞を受賞しているのだとか。
叡智の建築家―記憶のロクスとしての16‐17世紀の庭園、劇場、都市
中央公論美術出版
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こういうしっかりしたバックボーンを持った人が書くわけですから、内容にも信頼が置けますね。
発売予定は12月12日とのことなので、年末年始に読むにはちょうどいいかもしれません。
講談社選書メチエはそれほど重くない紙質なので、実家へ帰省する前に購入して移動中に読むというのもありかも?
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追記
思想史や美術史系の学術的なものではなく、記憶術ハウツー物が読みたいのであれば、Amazonで検索すればいくらでも出てきますね。
具体的な体験談としてはジョシュア・フォア『ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由』あたりが良質だと思います。記憶の宮殿テクニックなどを使って記憶力選手権のチャンピオンになったジャーナリストの話です。記憶術に関してまったくの素人が、専門家のアドバイスを元に1年間トレーニングした結果どうなったのかというドキュメンタリーなので、記憶術を胡散臭く思っている人には解毒剤になるかもしれませんね。